平成28年一級建築士製図試験課題が発表されました。
http://www.jaeic.or.jp/shiken/1k/1k-seizu.html
課題「子ども・子育て支援センター」
サブタイトル「保育所、児童館・子育て支援施設」
保育所の不足や待機児童の問題などの社会情勢に反応したテーマです。そして、すっかり定番となった地域との交流連携の複合施設です。
過去に出題された関連課題としては下記のような課題がありました。
平成15年「保育所のある複合施設」
部門構成:保育所部門、情報センター部門、駐輪場部門
平成19年「子育て支援施設のあるコミュニティセンター」
部門構成:子育て支援部門、文化・教養活動部門、共用・管理部門
サブタイトルにあるように大きく3つの部門に共用・管理部門が加わる部門構成が考えられますが、要求図書より3階建ての中で検討することになります。階別ゾーニングをするのか階ではなく縦方向に空間を利用するのかいくつか素案を面積割合とともに検討するパターンが考えられます。なお、3階建てということで作図量が多くなると思われます。
保育室関係が避難階以外の場合には、直通階段のほかにもうひとつ避難階段や避難器具による避難経路の確保が必要となることから(注4)においても避難階段に至る歩行距離・歩行経路の図示または記入を求めています。
空間構成的には最近の出題傾向より自由度が高い課題となると想像されますが、用途そのものはオーソドックスな課題といえます。課題文を施主の要望とし、いかに要望を満たしてなおかつ様々な提案をコンセプトとして計画案に実現させられるか、そして要求図書の中でどれだけPRできるかを考えると良いかと思います。
本課題で目につくのは(注1〜3)です。
(注1)はパッシブデザインを積極的に取り入れるような促しですが、これまでの国の施策として京都議定書から推進をしている二酸化炭素削減に関する政令が定められてきました。昨年からはそれらの実行期間にシフトしてきています。
品確法・長期優良住宅・自立循環型住宅・低炭素型住宅・改正省エネ法・ZEB・BELS・COP21などなど、一次エネルギー使用量の削減についてと、自前でエネルギーを確保する手法が多く盛り込まれています。
基本的には、太陽からの光と日射熱の利用と遮蔽や、地中熱の利用、自然換気(重力差換気など)などですので環境設備の知識をもち適切に建築計画へ盛り込める技量が求められます。
(注2)は地盤条件を考慮した基礎構造の計画とありますので、最近話題になった基礎杭問題や大地震による不同沈下などが影響した出題と思われます。
過去においては傾斜地に対しての基礎構造対応を問われる出題が何度かありましたが、地盤が悪いため適切な杭事業を選定して計画するとともに選定理由を要点の記述で求めてくる可能性も考えられます。
(注3)は天井の高い居室における天井等落下防止対策の考え方とありますが、これよりまず考えられるのが天井の高い大空間の出題です。これまでも大空間の出題がありましたが、その際の留意事項は主に次のようなものでした。
1.大スパンへの対応
2.各階をまたぐ空間構成への考慮
3.大空間の空調計画
4.その他(通風、採光、開放感、視認性、・・・)
ここにさらに天井落下防止への配慮が求められています。東日本大震災等にて問題となったことより法改正が行われましたので、ここにきて出題内容に盛り込んだと思われます。
このように、より多岐にわたる内容を6時間30分でまとめる力が必要になります。まずは、知識ベースをはやい段階(この2,3週間)で整理しておく必要があるでしょう。
アイキャッチ画像引用:ウィキペディアen