アメリカ海洋大危局からの発表ということで「世界の大気中CO2濃度、月平均で最高値更新」というニュース記事が出ています。
http://www.afpbb.com/articles/-/3047625
この中でppmという単位が出ていますがこれは百万分率といわれるものです。百分率ですとお馴染みの%という単位です。
記事中では400ppmという数値が出ていますが、これがどの程度かというのはなかなかわかりづらいかと思います。
例えば日本でのビル衛生管理法の中では次のような基準値が設定されています。
二酸化炭素 :1,000ppm以下 = 0.1%以下
一酸化炭素 :10ppm以下 = 0.001%以下
浮遊粉塵 :0.15mg/㎥以下 = 150μg/㎥以下
ホルムアルデヒド:0.1mg/㎥以下 = 100μg/㎥以下
また、気象庁より公開されている地球全体の二酸化炭素の経年変化は次のようになっています。
詳しくは気象庁のデータをご覧頂きたいと思います。
http://ds.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/co2_trend.html
ここでは、二酸化炭素についてが地球温暖化の話題のときになぜ取り上げられるのかを改めて考えたいと思います。
いちばんよく取り上げられる理由は、地球温暖化の原因としての温室効果ガスとしての影響です。上記のグラフや気象庁のデータをみると大気中の二酸化炭素の増加と共に、外気平均気温が上がっているのがわかります。
そもそも地球温暖化が人間の活動に起因する根拠となる部分が抜けた記述や議論が多く見受けられますが、現在地球温暖化に影響を与えている人的起源の温暖化ガスの最たるものが二酸化炭素であるという内容を「IPCC第4次評価報告書」のなかにみることができます。
詳しくみたい方はIPCC(INTERGOVERNMENTAL PANEL ON climate change)の公式サイト や環境省の「IPCC第4次評価報告書について」をご覧ください。
これらの根拠により国家レベルでの取組みが現在行なわれているということになります。実際は、人的要因だけがclimate changeつまり気候変化ということではありません。雲や太陽放射変化などの気候因子が原因となる要素もあります。これらが気候に与える影響に関しては、科学的な理解水準がいまだ異なっていて、気候因子に関する部分の理解水準がまだ比較的低いといわれています。このような専門家による意見の違いなどに関しては、報告書にも「意見の一致度」として評価結果が記載されています。
上記報告書の中で記載されているものとしては下記のような図があります。
各要因別の放射強制力の評価結果の図になります。正の値が大きいほど、地球温暖化を促進する効果が高いことを示します。一番右側のNet Anthropogenic Componentが人的要因の合計値で約1.6(W/m)二乗くらいと読み取れます。この図中にある太陽放射の変化など気候因子によるものは人的要因の合計値に比べると値が小さいのがわかります。しかし、気候因子に起因する部分はまだまだ不明な点も多いので観測データの積み上げと掘り下げた分析検証が必要であると思います。
先日参加させて頂いたオイコスフォーラムの中では、銀河宇宙線が地球の雲の生成に影響を及ぼし(=気候に影響を及ぼし)、その地球近傍での宇宙放射線のふるまいに太陽風(太陽宇宙線)が影響を及ぼすという(デンマークの気候学者スベンスマルクの)説があるという宿谷 昌則先生のお話しがありました。これらに関する知見はまだまだ掘り下げるべき点が多くあり、検討すべき事柄がたくさんあるということかと思います。
さて、壮大な話しの一方で身近な部分考えた場合、冒頭で「二酸化炭素:1,000ppm以下 = 0.1%以下」の基準があると記述しましたがこれは(財)ビル管理教育センター(1971) ビルの環境衛生管理. 厚生大臣指定建築物環境衛生管理技術者講習会・テキストに下記のような記述があります。
「二酸化炭素濃度は、空気清浄度の1つの指標として、従来より測定されており、また居室では、人の呼気、喫煙、炊事、また調理等により、影響を受けやすい。二酸化炭素自体は、少量であれば人体に有害ではないが、1000ppmを超えると倦怠感、頭痛、耳鳴り、息苦しさ等の症状を訴えるものが多くなり、フリッカー値(フリッカー値が小さいほど疲労度が高い)の低下も著しいこと等により定められたものである。」
また、空気中の濃度ということで考えると二酸化炭素など酸素以外の濃度が高くなると酸素の割合が相対的に減るとも考えることができますが、酸素の割合は元々大きいため影響を考慮する程ではないと考えられています。
なお、国立環境研究所からは記者発表2008年1月23日のレポートとして下記の資料が公開されています。
大気中酸素濃度の減少量から二酸化炭素の陸域生物圏吸収量の推定に成功
-放出された化石燃料起源の二酸化炭素の30%が海洋に、14%が陸域生物圏に吸収-
上記資料中にもありますが、酸素については大気中の酸素濃度が約21%(210,000ppm)といわれています。
酸素濃度の安全下限界は18%といわれていますが、18%を下回ると酸素欠乏とされます。症状の出方は個人差がありますが、16%程度にまで低下すると脈拍・呼吸数の増加、14%になると運動機能が低下し10%を下回ると行動の自由が失われます。なお、6%以下になると数呼吸で死亡するといわれています。
地球の大気酸素濃度の変化は上記レポート中に下図が掲載されています。
縦軸が酸素濃度の変化で横軸が二酸化炭素濃度の変化を示しており、酸素の減少傾向と二酸化炭素の増加傾向が読み取れます。
この分野については一度にすべてをひも解けるような領域ではありませんが、自分の身近なところにまで影響がある部分なので引き続き追いかけていきたいと思います。
なお参考にですが、室内で大気からの新鮮空気を取り入れ、室内で給排気を行なう開放型燃焼器具を使用した場合に室内の酸素が燃焼により消費されますが、何らかの原因で新鮮空気が供給不足となると室内酸素濃度が下がることになります。室内の酸素濃度が約18〜19%に低下すると、不完全燃焼による一酸化炭素量が急増し、一酸化炭素中毒の危険性が高くなります。