たけたライブラリーヴィレッジ ~人と本の出会う場所~
新竹田市立図書館の設計者選定に係るプロポーザル提案
新竹田市立図書館の設計者選定に係るプロポーザルにおける協働提案である。
檀上新建築アトリエ・中村アトリエ建築設計事務所・株式会社 TERRA DESIGN にて提案製作をした。
-以下に提案説明書の全文を掲載する-
現代における図書館の役割は多岐に渡っています。情報の観点においては、図表・書籍中心から知的資源全般が対象となってきています。インターネットの普及により誰もが直接的に知的資源にアクセスできるようになっており、目の前の情報の品質を判定できるスクリーニング能力、「身体知」が情報時代における重要な知的資源となりつつあります。このため自分がその真偽を知らないことについても真偽の判定ができる能力、いわゆる「情報リテラシー」を身につける必要があります。適切な集合知形成のために、これらを育て補完するまたは最適な情報を発信/分別することが知的資源の集約である図書館に求められるといえます。学校教育の観点においては、教育を受けることの目的として知性や感性を育むことが本来趣旨といえます。人間が能力を開花させるのは自己利益のためではなく、まわりの人たちと手を携えて活動するときであり、自分とは異質の能力や個性を持つ子どもたちと協働して、集団的パフォーマンスを高めるための技術や共生の作法を学ぶことが生きていく上で大切なことです。これが社会であり「集団的叡智」(人間の達成)に繋がるといえます。いいかえれば若い人たちの「市民的成熟」を育てる役割がこれからの図書館に求められるといえます。ネット社会の観点においては、「誰(どこ)に繋がっているのか」ということが重要であり、キャリアパスの広がりや社会的地位をも決めてしまいます。膨大な発信者等の中から良質な情報発信源を特定するためには相応の目利きが必要で、情報は何層かのスクリーニングを通過/伝播しながら良質なコンテンツとなっていきます。図書館は良質な「集合知」であることが求められます。
これらの観点から、図書館を通して市民的成熟を高めていくことが求められると考えます。また、ひとが安心して社会的営みを維持するためには居場所が必要です。それは、家族であり家であり通った学校や図書館であり故郷です。故郷は記憶と想い出の情景といえます。竹田の歴史を知り故郷を想いふるさととして誇りに思える必ず帰れる居場所を再構築することが「竹田に出会いなおす」ことといえます。図書館を訪れれば書籍やひととの豊かな出会いがあり、木漏れ日や爽やかな風やせせらぎの音に感性が刺激されます。また、集合知である図書館はひとや情報が成長し洗練され市民的成熟をしていくDNAを内包するものです。現在の高度なインフラを活用して、ハード・ソフトの両面において学校教育施設や各エリアの図書館や行政施設等の各ハブ拠点との有機的ネットワークの構築と継続した成長が、一元的なプログラムにより可能となるしくみが必要です。これらのハブ拠点の増殖が城下町再生と同調成長することになり、この増殖の核となるのが竹田新図書館と位置づけられます。居心地の良い所に人は集まり、人の集まる所に出会いがあり、人の集まる所から新たな何かが生まれます。このようにして過去といまの竹田の物語を紡ぎはぐくみ未来へと受け継ぐ場としての図書館を提案します。
建物DATA
[所在地] 大分県
[構造規模] RC造一部木造・地上2階
[敷地面積] 2588.00㎡
[延床面積] 1553.26㎡
[竣 工] -