もりの舞台 Competition
守山中学校校舎改築基本設計・実施設計委託業務コンペ
守山中学校校舎改築基本設計・実施設計委託業務コンペにおける協働提案である。
檀上新建築アトリエ・中村アトリエ建築設計事務所・株式会社 TERRA DESIGN にて提案製作をした。
-以下に提案説明書の全文を掲載する-
教育施設において、中学校は子どもたちの成長過程の中でも大事な時期を過ごす場所であり、 また地域の核となる施設である。特に中学・高校における学習や経験は人格形成等多くの点にお いて影響の大きい時期であり、また、故郷の想いとしても強く記憶に残る時期である。特に中学 生は感受性がとりわけ多感な思春期の時期であり、きめ細やかに成長を見守り育てていく必要 がある。このような多感な時期の子どもたちが、生きる力と思いやりのある人間力を磨き上げるこ とができるようにするためには、教師、家庭、地域の連携や見守りが必要である。
また、知識や経験、歴史や文化などを伝え、引き継ぎ、そして育てていくためには世代間交流が 必要であり、世代を越えて集い、学び、語り合い、人生を豊かにする活動や交流ができる文化・ス ポーツ等様々な生涯学習の地域の教育施設拠点として、解放された施設としての運営もこれか らは必要である。そこで、守山の地より郷土に誇りをもち未来を担う人材を育て羽ばたかせる拠 点として「もりの舞台」を提案する。
平面的にも南北の自然風の抜けをとるとともに、北側には1階に樹木を配置、2,3階には半屋外 空間のバッファーゾーンとなるデッキに植栽スペースを計画することでクールスポットが生成され 北側の開口部からの冷気を取り込める計画としている。植栽の手入れ・管理を生徒がおこなうこ とで環境学習の場とすることができる。同様に南側にもデッキを計画し、デッキの庇の機能により 日射の制御と樹木・植栽による日射制御及び葉の放熱蒸散による外気温の上昇抑制効果を図 っている。これらの気候風土を利用した設備機器に頼らない環境整備のほか、さらにゼロエネル ギーに向けた取り組みとして屋上に太陽光パネルを設置や、ソーラーパネル型の外灯の設置などにより消費エネルギーの自己創出を図る計画としている。また、雨水貯留施設をピット等に 計画をし、中水利用の促進を図る。これは、災害発生時において避難施設としての機能を果たす 整備項目として蓄電設備や備蓄倉庫の計画とあわせて考慮している。これらの環境設備計画は 維持管理や効果の計測を学習プログラムとして生徒の環境学習として継続して行ない、さらには 知識と経験を地域へ拡げていく活動拠点として整備をする。なお、設備機器の維持メンテンスは 容易に行なえるように機械設備室や点検口の設置に配慮し、建物が維持管理しながら末永く愛 着を持って利用していくことを生徒が学習できるように考慮する。
ここではいくつかの「舞台」を計画 する。校舎各階それぞれ南北に跳 ね出したデッキ部バッファーゾーン における内と外の中間領域に生まれるたまり場の「舞 台」、校舎アトリウム部分とペデストリアンデッキが接続 する学習・運動・地域交流等のクロスポイントとなるエ ントランスゾーンの「舞台」、そして正門アプローチ部 分に既存の緑を活かしながら新たに移設して計画した 卒業生の想いと記憶が残る「方円の庭」を核とした地 域交流ゾーンとなる「舞台」である。これらそれぞれの 「舞台」を計画することで学びや、語り合いなど多様な 活動が展開され、ひととひとのつながりが促進される ことが期待できる。そしてまた、学校全体がこどもたち の夢づくりの「舞台」として計画をしている。 各ゾーンは、セキュリティーラインを明快にして部外者 の出入りを制御するだけでなく、将来、少子化や学校 教育の時代に合わせた変化や民間委託等の施設管 理運営の変化に対応できるようにし、複合施設として の弾力的かつ柔軟な運用をする場合に備え、運営主体を切り分けしやすくなるように明快なゾーニングの 分離を図っている。各ゾーンをつなぐようにペデストリアンデッキを計画している。
正門からは緩やかな坂により、毎日学校に通っていた思い出として記憶に残る印象的な校舎までの豊かなアプローチの風景を演出し ている。これにより2階レベルにまで自然にあがることができ、比良・比叡の山並みや三上山の眺望、周辺の田園景観を望むことができ る。また、ペデストリアンデッキを体育館や柔剣道場を囲むように計画をすることで、将来2階レベルの観客席を設置できるだけでなく、 南側道路にペデストリアンデッキを拡幅して守山市民運動公園との動線が確保できるように計画をしている。 さらに、ペデストリアンデッキの下部空間にクラブハウスを計画し、クラブハウス・柔剣道場・体育館・運動場・校舎への行き来が雨天時 も軒下空間により雨に濡れずに移動が可能な計画としている。 各ゾーンとの連携とセキュリティゾーンの明快な切り分けは校舎を南側に計画することで成立しているが、この配置計画により守山市民 運動公園の豊かな緑の景観を校舎に取り込むことができ、また既存校舎を使用しながら工事を行なうことができるように計画している。 そして、南東側の湖南街道沿いはグラウンドと隣接する配置とすることで、植栽等による緩衝帯の計画しやすくし、守山市景観計画の 沿道景観軸に適合した豊かな沿道景観を演出することができる計画としている。
校舎はペデストリアンデッキに対してアトリウムによる豊かな吹き抜け空間をエントランスゾーンとして計画している。ここで様々な交流を 図ることが可能となっており、地域コミュニティとの交流や生徒や教員の会話が弾む空間を演出している。交流ゾーンとしての機能をも たせつつ、校舎への出入りの監視が行なえるように受付・職員室等の施設管理機能を隣接させた計画としている。 校舎は施設耐用年数や耐震性を考慮して鉄筋コンクリート造を主要構造とし、街並景観に配慮した外観と建物高さを考慮して3階建て としている。そして施設全体にわたりユニバーサルデザインによる計画を基本とすることで誰もが使いやすい施設としている。 1階は特別教室ゾーンとして計画をしている。将来、複合施設としてこれらの諸室を地域利用することが可能なように、上階とセキュリ ティラインが明確になるように計画をしている。 2,3階は普通教室ゾーンとして計画をしている。落ち着いて学習のできる教室とフレキシブルな利用が可能なオープンスペースや東屋 的なフォリーを計画し、多様な学習プログラムに対応できるようにしている。また、空間を有効に活用し、感性を磨くことのできる豊かな 場を演出するためたまり場的な場を計画している。これにより、自然発生的にコミュニケーションが育まれ人間関係の形成が図れるほか 授業時間外の学習ができる場所としても利用することができ、生徒が切磋琢磨しながら様々な学習・活動ができる場を計画している。 そして落ち着いた和やかな雰囲気で学びすごせるように、手に触れる部分を効果的に滋賀県産木材や自然素材で仕上げるような内装 計画とする。また、開放的で談話しやすい雰囲気とすることで校舎全体が生徒と教員の交流がしやすくなり、抜けを通して全体を見渡しやすい空間とすることで教員相互の連絡も図りやすくしている。 室内環境を快適にするため、吹き抜け空間を各所に計画し、光井戸としての機能や重力換気による通風の確保ができるように計画をしている。
建物DATA
[所在地] 滋賀県
[構造規模] RC造一部鉄骨造・地上4階
[敷地面積] 000.00㎡
[延床面積] 000.00㎡
[竣 工] -