南の花の里〜団地がみんなのサトになる
団地再編 COMPETITION 2013
団地再編 COMPETITION 2013における協働提案である。
檀上新建築アトリエ・中村アトリエ建築設計事務所・株式会社 TERRA DESIGN にて提案製作をした。
-以下に提案説明書の全文を掲載する-
○集い暮らす現代の「ふる里」 団地は「一団の土地」または「一団の地域」といった意味合いで名付けられ、高度成長期時代のニュータウン開発ととも に時代を象徴するものとして盛んに建設されました。 時と共に高齢化や少子化の問題が顕在化し、ことさら顕著に表れたのもまた団地でした。現在、多くの団地が建物の劣化 や空き室の問題を抱えている状況が伝わってきています。
このような状況の中、最近ではリノベーションやリユースの考えが官民共にムーブメントとして沸き起こっていきていま す。すでに、集合住宅においても多くの取り組みがされてきていますが、維持管理費の捻出等で取り組みが頭打ちになっ ている側面もみられます。また、一方で団地をホテルとして活用するなどの事業により、収入を得る取り組みがみられる ようになりました。
改めて考えてみると、「団地」の意味合いは現代の「集い暮らす現代のふる里」と捉えることができます。 里には雑木林や田畑など自然との共存・管理の仕組みが備わっており、その地域内での職住共生が成立していました。 建物などの資産は公私ともに里人が維持管理をおこない、経験を積んだ高齢者から若者に生活や学問や子育てなど受け継 ぐ仕組みのほか、こどもたちを見守り、よそ者など防犯の監視をするといったしくみがありました。 街道筋では、来訪者を一定の秩序を保ちながら温かいおもてなしをすることで、自然にさりげなくサービスの対価を得る 商人の心得がありました。そして、このおもてなしの心得や、得た対価は清潔で整ったまちなみの維持にも役立っていま した。
このように、里では世代を通して互いを助け合い、知恵や技術・経験などを引き継いでいく各世代のバランスがとられて いました。また、茅葺き屋根の葺き替えを里人皆で祭り事的に行なうなど、資産を維持継承するさまざまなしくみがあり ました。
昔のスタイルにそのまま戻るのではなく、これまでの「里」の仕組みの本質を現在のさまざまな事柄・しくみと結びつけ 「南の花の里」を提案します。
○団地に必要なモノ/団地に出来るコト 現在の団地で必要となるもの(求められているもの)の中から優先度の高いものとしては、1.子育てのしやすい環境、 2.空き室をへらす、3.団地に住み続けられるようにする、の3つが挙げられます。
この3つの団地に必要なモノを実現するために、団地に出来るコトを改めて考えてみるといくつもの団地力(潜在力)が 既にあることがわかります。とりわけ特徴的なのは、広い敷地(良好な日照通風)、ひとが集まっていることより人手の 確保が容易、管理組合・自治会があることより組織だった活動が比較的容易であること、落ち着いた住環境、年数を経た からこそのビンテージ感等が挙げられます。
また、周囲には活用・協働することのできる要素が数多くあります。とりわけ注目したいのは、観光資源が豊富であるこ と、体験施設などがすでにそろっていること、都市圏近郊でありひとを誘致しやすい立地であること、自然環境が良好に 保たれていること、河内長野市による7Kや子育て支援等の積極的な施策実施等が挙げられます。
このように、南花台団地には、豊かで多くの「団地」を「サト」にする潜在力が数多く備わっていることがわかります。 これらを活かすできるコト、緩やかにでもすぐやれるコトを考えました。
○ まず、来てもらってすごしてみる 旅行会社や行政との協働により、プチ定住、ショートステイ、観光ツアーなどを企画して、宿泊施設として住戸を活用す ることができます。管理組合による自主運営により、団地コンシェルジュやオプショナルツアー企画&ガイド等の運営を することができます。これにより、運営維持のための収入を得ることができるだけでなく、居心地の良さ、子育てのしや すさなどの体験より、宿泊体験者から定住者へのステップアップを期待することができます。
団地コンシェルジュを中心としたおもてなしにより、みんなの託児所、団地の駅、カフェ、アトリエなどによる空室の活 用は、収益を得るだけでなく来訪者や住民相互のコミュニティーの促進にもつながります。このような触れ合い、コミュ ニケーションを穏やかにゆっくりと受け入れていきながら、最終的には再来訪や新たな住み手の創出につながります。
○ こどももおとなも暮らしやすく 路地デッキ、遊びコート、団地力の3アイテムにより、ご近所さんからのコミュニケーションを、サト全体にまで緩やか に結びつけることができます。隣接棟の同一階を路地デッキでつなぎ、やぐら風のエレベータータワーを計画することで 自然と出会いの機会を創出することができます。これにより、利便性とバリアフリー化を実現することもできます。
地上では、エントランスステージや朝市広場が出会いを増やし、エレベータータワーに掛かるはしごや遊びコートが子ど もたちの遊び場となり、屋外読書広場や癒し湯から湯上がりを東屋で涼むひとたち等による周囲の見守りが子どもたちを 内から育てます。豊かな緑とビオトープが景観を豊かにし、自然との触れ合いが情操と感性を育てます。
○ お小遣いを稼ごう 周囲の施設や畑を利用して自家菜園的に野菜等を収穫し、自給自足的な生活は食育としても効果的です。食べきれないほ どの収穫があったときには、朝市広場で販売をしたり、キッチンスタジオで調理をして、団地の駅で販売することもでき ます。 思いついたものを作りたいときには、工具のそろったアトリエを利用することができます。作り上げた作品は、団地で運 営しているサイトや団地の駅等で販売することもできます。料理や工作に専念している間は、みんなの託児所で安心して 子どもを預けることができます。
□3つのアイテムとできるコトすぐやれるコトから団地は生まれ変わります 本提案では、「路地デッキ」、「遊びコート」、「団地」の3つのアイテムを提案しています。これらはソフト的な要素を含 むハード構成です。一方で、住み手を増やし、維持管理が継続され、子育て家族や高齢者にも暮らしやすい、緩やかで暖 かみのある受け入れやすいコミュニティーの形成・維持を促すソフト的な提案をしています。 基本的な考え方と時間軸的なフローは共通としながら、これらの提案要素を、できるコト、すぐやれるコトにわけて手の 届くコトから始めることができます。 そして、このしくみはその地域、その場所、その団地の個性や潜在力を活かしていくことができます。 ですので、南花台団地にとどまらず、どこの団地であっても、「そこの団地ならではの個性」をもつことのできる提案、 南の花の里「団地がみんなのサトになる!」です
建物DATA
[所在地] ○○○○県
[構造規模] RC造一部鉄骨造・地上2階
[敷地面積] 000.00㎡
[延床面積] 000.00㎡
[竣 工] 0000年00月