写真の計測器は空気温度、相対湿度、気流風速、照度を測定できる便利アイテムです。
最近、これで講義をする教室の測定を時々行なって体感と数値の擦り合わせをしています。
2015年5月4日火曜日(晴れ→曇り)の外気温と教室内の測定をほぼ一日にわたって計測してみました。
午前はちょうど建築士講座の環境設備の講義でしたので、測定と合わせてPMVの評価も実施してみました。なんて合理的!(笑)
なお、PMVとは「予測平均温冷感申告」といわれるものです。
-3(非常に寒い) -2(寒い) -1(やや寒い) 0(どちらでもない) +1(やや暑い) +2(暑い) +3(非常に暑い)
という指標で多数の在籍者の平均的な温冷感を示すものです。
-0.5
外となっているのが外気の数値で、内となっているのが教室内の数値となります。F、W、Cとなっているのはそれぞれ床、壁、天井の放射温度計で測定した数値となります。また、午前は8:45時点では2,3名でしたがPMVの実施時には46名、その後は49名の人員でした。人間は約100W/人のヒーターなので約4900Wのヒーターを稼働していたことになります(笑)
建物空調としてはファンコイルユニットが稼働していました。
5月上旬という中間期なので室温25度、相対湿度50%程度ですと比較的快適な温熱環境といえます。実際にPMVの実施結果もおおむね快適範囲に収まっているのがわかります。
外気温に対して室内温度があまり変わらない状況ですが、相対湿度は外気の54.9%(8:45)から50.7%(9:35)という減少変化に対して、室内は49.6%(8:45)から55.3%(9:35)と増加変化しています。これはおそらく室内の人員が増加したことによる水蒸気量の大幅な増加に起因すると想像できます。
その後50.8%(11:30)に減少しますが、これは室温が上昇(25.8℃から26.5℃)したことによる相対湿度の変化ではないかと推測しています。(同じ水蒸気量である場合、温度が高くなると相対湿度が下がる。)
また、同じ教室で午後も講義だったので測定を続けてみました。
建物はRC造の建物ですので躯体の熱容量がある程度影響してくると考えられます。午前のデータ共に室温に対して床壁天井の表面温度は1〜3℃程低い数値となっているのがわかります。これは構造体のコンクリートや石膏ボードに徐々に熱が入射しているが、熱容量が大きい素材のため熱の赤外線域の長波長による再放射にタイムラグが発生しているからと推測できます。(コンクリートは再放射に約半日程度の時間差があります。)
床壁天井での温度差をみると上下で2〜3℃程度あることがわかります。温かい空気は上昇するためですが、建物の空調設備の制御により室内上下の温度差が快適範囲といわれる2〜3℃以内に収まっていることが確認できます。
このように、数値を計測しながら体感とすりあわせることで数値の意味合いの理解が深まります。
いろいろと調べていくうちに温度と湿度だけでなく、床壁天井からの放射熱の効果が体感に大きく影響することもわかってきました。
冬期の室温が19℃であっても放射熱が22〜23℃程度あれば、室温が23℃のときよりもずっと快適な室内環境も実現できます。
エアコンの気流は不快なドラフト感を伴うこともあり、放射熱(輻射熱)による温熱環境設計はより快適な室内空間を生み出します。引き続き違う場所での計測結果を記事にしたいと思います。